2歳5ヶ月  Yちゃんの事例から
「調整経過」
「全身状態の変化と自発的運動」
「首座りの誤解について」
これらを三回に分けて見ていきます。

第一回「調整経過」

Yちゃんの発達経過
生後6か月首座り、8か月寝返り、1歳1か月お座り、2歳ハイハイ

頭の形:一見丸く膨らんでいるように見えるが、頭頂部の右後部の低さが明らかで膨らみの左右差が大きい。額の上下幅が狭く凸状。頭部全体が圧縮されることで左右に開いた顔貌。

現状
・ハイハイで、手足を左右交互に動かすことが出来ず、
 ぴょんぴょんと飛び跳ねての移動。
・手を持って支えてあげると立てるが、
 手を引いて歩かせようとしても脚が左右交互に出ず、
 倒れ込むように前進している状態。
・発達全体の遅れ、低身長、低体重、斜視
・情緒豊か、理解力もあるが、喃語状態で言葉は出ない

どの検査でも異常は見られず、
「今の医学では解り得ない、原因不明」と言われている。

調整経過
初回後 「積極的に動き回る、活発さの明らかな向上」
3回後 「おもちゃなどへの関心が強くなり、
     以前は渡してあげると手にとっていたのが、
     自分から手を伸ばしてとろうとする」
5回後 「周囲の人から顔が変わったと言われる」
    「ハイハイ移動時、段差を越えようとする際に、
     脚を交互に出すようになっている」
10回後「壁に寄りかかった立ちで両手で物を持って遊べる」
    「身体の大きさがずっと変わらなかったのに、
     オムツが今までのMでは足りなくなりLにサイズアップした」
12回後「手を持ってあげると自分から脚を左右交互に出そうとするようになった」
    「色んな物への関心が凄く、家中何でも触って確かめようとする」
16回後「ついに普通のハイハイをし始めた。
     左右交互に出せるようになり、祖父祖母泣きそう、
     家族中大喜び「やっと本来の成長になってきたんだ!」」

調整継続中

第二回「全身状態の変化と自発的運動」

1、全身状態の変化
初回全身状態
・頭部全体の強度の上下圧縮、特に後頭部の強い短縮
・背面全体の強い筋緊張
・振り向き時、首が折れる様なグニャリとした状態になる
・座位での肋骨下縁と腸骨上辺との間に隙間が全くない
・静止立位での強度肩上がり(頭が埋まったような上半身の圧縮感)
・幼児独特の揺らぎのない「固まった立ち姿」
・膝の過伸展(膝関節の反り過ぎ)
表情が険しく、やぶにらみ様

調整直後は、
後頭部短縮緊張と表情の柔和、
全身の力み感は減少するが、
4回目までは大きな変化なし。

5回目調整前検査
座位:後頭部の短縮が調整直後の「緊張緩和状態」にあり、
   背骨周辺にも柔らかさが出てきている。
   これにより振り向く時、今までは
   局所的に首周辺しか動かせずにいた状態から、
   胴体も含めた緩やかな動きになり、
   首が折れ曲がる様なグニャリとした振り向きが半減した。
立位:膝の過伸展が見られなくなり、
   膝関節に遊びのある幼児らしい立位状態に変化。
   強度の肩上がりも減少。


2、自発的運動
この頃、
「膝立ちで両手を振り子の様に前後に振る動き」
をしきりに繰り返していた。
また、段差の乗り越え時、
脚を左右交互に出すようになった頃。

緊張で固まっていた筋肉が緩んでくると
その分、バランス感覚や中心感覚を高める必要がある。
腕を前後に振る事は、首肩周辺の縮んだ筋肉を
緩めながら伸ばす効果がある。
これを、膝立ちで行うと同時に
バランス感覚、胴体部強化にも効果的。

他のお子さんでもよく見られることですが、
身体が変化してくると、
今まで使えずにきた部位が動く様になるのが分かるのか、
無意識に必要な動きや、
特定の動きを繰り返すことがあります。

こうした「自発的運動」は、身体の発達を促す場合だけでなく
不快状態を緩和する際にも、起こることが考えられます。

頭部を左右に振る、全身が小刻み揺れる、
痙攣様の動きなどの後、落ち着くお子さんがいます。

マス目の歪みや、筋肉の拘束感、不快感が強度の時、
身体が恒常性を保つために、行っている場合がある
事が考えられます。

9回調整直後 座位で首が立ち始める
この日の調整時も、ニコニコ、伸び伸びした様子で、
初回の険しい表情からすると、子供らしさが感じられる。

15回後 背面部の筋緊張が更に減少。
     幼児らしい筋肉の柔らかさ。
     手つなぎで脚を左右交互に動かせるようになってきた頃。

9〜15回までの間、
高這いの様な動きをしきりに行っていた。
背面の緊張減少に対し、胴体前面部、四肢の強化を
行っていたものと思われる。 

子供達の経過を見ていると、
身体と言うのは、誰に教わるものでもなく、
自分に必要な運動が分かる様に
出来ているんだなぁと感じさせられます。

筋肉が本来の伸縮性のある状態に
変化してきているYちゃん。

今よりも、もっと自然な表情、
自然な動き、思うように動ける身体に向けて、
家族中で見守っています。

第三回「首座りの誤解について」

発達経過
生後6か月首座り、8か月寝返り、1歳1か月お座り、2歳ハイハイ

お申込時に頂いた発達経過では
1歳1か月お座りとのことでしたが、
初回時、お座りの観察では、
座位での肋骨下縁と腸骨上辺
(あばら骨と骨盤)との間に隙間が全くなく、
全身を上下に短く圧縮する方向の力が、
身体をギチギチに固めている状態でした。

この圧縮固定状態により
「一見お座り出来ているように見える」事があります。

また、座位では胴体の真上に頭部が乗っていますが、
頭と肩が近すぎで首の確認が困難な状態にあり、
お座りの胴体同様、圧縮固定状態により
「一見首が座っているように見える」事があります。

動作時の観察では、
・首の伸縮(首が立つ)がなく、
・振り向き時、顎が上がるように
 首がグニャっと折れ曲がる。

「首の筋肉が骨格を支える状態になく、
ただ重力による圧力だけを受け続けている
ような状態」ですが、通常、
こうしたことは一般の方には見分けはつきません。
また、ある意味では、その安定した座り姿から、
医療関係者でも分かりにくいのかも知れません。

調整開始当初のYちゃんの全体像
頭部に上下圧縮が強くかかるような歪みの状態があり、
「頭蓋骨の重さが下方向への圧力として
 のしかかる様な骨格状態」
にありました。本来は
「頭蓋骨から背骨が下方向へぶら下がる骨格状態」
が必要です。

重たい頭を支えるのですから、
頭の重さが下方向にかかるのは当然です。
しかし、上体を起し、立つことを困難にする様な
不自然な圧力となっている場合があります。

この場合、頭部の重さが下方向への
強い圧力としてかかり続けるため、
上半身を起こし姿勢を維持するのに
強い筋緊張が必要となります。

圧縮される方向に力がかかってくる中で、
強い筋緊張を強いられる状態にあるため、
思う様な動作もしにくく、発達への影響が考えらます。

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